こんにちは。
年末の忙しさにかまけて漢文が読めず慕容の話が全然進んでいません。
少し気分転換で、久しぶりにおすすめ歴史漫画について書きます。
中国史も離れて、エジプト行きます。
犬童千絵『碧いホルスの瞳ー男装の女王の物語ー』です。
ピラミッドや王家の谷、ミイラなど古代エジプトを扱ったテレビ番組や映画などは、たくさん見てきましたが、今まであまり古代エジプトをがっちりと書いた漫画を読んだことがなかったです。自分の中でようやく古代エジプトを描いた漫画に巡り合いました。
碧いホルスの瞳 -男装の女王の物語- 1 (ビームコミックス)
エジプト新王国時代の女王
主人公のハトシェプストは、エジプト新王国時代・第18王朝のフォラオです。
エジプトには、ピラミッドで有名なクフ王や、エジプト史上もっとも偉大な王と呼ばれたラムセス2世、黄金のマスクで有名なツタンカーメン、世界三大美女の一人でカエサルの愛人のクレオパトラなど多くの人が知っている王がいますが、いまいちそれぞれがいつ頃の王であったかなどわかりません。
そこでまずはハトシェプストを含んだエジプトの歴史をごくごく簡単に書きます。
エジプトの歴史【超簡易版】
エジプトの歴史の時代区分は有名なところで行くと、
古王国時代
中王国時代
新王国時代
の、3つに分かれますが、もう少し細かくすると
①初期王朝時代(紀元前3100年頃~紀元前2686年頃)
第1・第2王朝
②古王国時代(紀元前2686年頃~紀元前2185年前後)
第3・第4・第5・第6王朝
③第1中間期(紀元前2180年頃~紀元前2040年頃)
第7・第8・第9・第10王朝
④中王国時代(紀元前2040年頃~紀元前18世紀頃)
第11・第12王朝
⑤第2中間期(紀元前1782年頃~紀元前1570年頃)
第13・第14・第15・第16・第17王朝
⑥新王国時代(紀元前1570年頃~紀元前1070年頃)
第18・第19・第20王朝
⑦第3中間期(1069年頃~紀元前7世紀半ば ※諸説あり)
第21・第22・第23・第24・第25?
⑧末期王朝時代(紀元前664年~紀元前332年)
第27・第28・第29・第30・第31
⑨マケドニア時代(紀元前332年~)
⑩プトレマイオス時代(紀元前305年~紀元前30年)
になります。(諸説あり)
第○○王朝には、第○○中間期などのエジプトが分裂している時代の王朝も数えられます。複数の王朝が並立しているときもあったようです。
超絶簡易歴史年表
そして、この中に、ハトシェプストを含む有名人や、周囲の出来事を入れていくと次のようになります。
①初期王朝時代(紀元前3100年頃~紀元前2686年頃)
第1・第2王朝
・ナメル王のエジプト統一
②古王国時代(紀元前2686年頃~紀元前2185年前後)
第3・第4・第5・第6王朝
・クフ王(紀元前2579年頃~紀元前2556年頃)→ギザのピラミッド建設
③第1中間期(紀元前2180年頃~紀元前2040年頃)
第7・第8・第9・第10王朝
・第10王朝と第11王朝が南北に分かれて対立する
④中王国時代(紀元前2040年頃~紀元前18世紀頃)
第11・第12王朝
・約140年の混乱期を第11王朝のメンチュヘテプ2世が再統一した。
・第12王朝のセンウセレト3世の時に最盛期を迎える
⑤第2中間期(紀元前1782年頃~紀元前1570年頃)
第13・第14・第15・第16・第17王朝
・異民族ヒクソスの支配→第15王朝の建国
⑥新王国時代(紀元前1570年頃~紀元前1070年頃)
第18・第19・第20王朝
・イアフメス1世がヒクソスを追い第18王朝を開く
・トトメス1世(紀元前1504年~紀元前1492年)→ハトシェプストの父
・トトメス2世(紀元前1492年~紀元前1479年)→ハトシェプストの兄
・ハトシェプスト女王(紀元前1473年~紀元前1458年)
・トトメス3世(紀元前1479年~紀元前1425年)→エジプト史上最大の版図を形成
・アメンヘテプ4世(紀元前1350年~紀元前1334年)
→アテン神を国家神とする。アマルナへ遷都
・ツタンカーメン(紀元前1333年~紀元前1323年)→少年王&黄金のマスク
・ラムセス2世(紀元前1279年~紀元前1213年)
→ヒッタイトとの激闘・カデシュの戦い(紀元前1275年)
・海の民の襲撃
⑦第3中間期(1069年頃~紀元前7世紀半ば ※諸説あり)
第21・第22・第23・第24・第25?
・リビア人の王朝(第22王朝・第24王朝)
・ヌビア人の王朝(第25王朝)
・アッシリアの侵入
⑧末期王朝時代(紀元前664年~紀元前332年)
第27・第28・第29・第30・第31
・アケメネス朝ペルシアのエジプト支配
⑨マケドニア時代(紀元前332年~)
・アレクサンドロス大王の支配
⑩プトレマイオス時代(紀元前305年~紀元前30年)
・アレクサンドロス大王の将軍・プトレマイオスが大王の死後、エジプトを支配
・クレオパトラ7世→ローマのカエサル、アントニウスとの浮世
・オクタウィアヌス(アウグストゥス)によって滅亡
めちゃくちゃざっくりですが、古代エジプトの流れや登場人物はこのようになります。
世界一面白い 古代エジプトの謎【ピラミッド/太陽の船篇】 (中経の文庫)
漫画のストーリー
エジプトの歴史を簡単に書くつもりが長くなってしまいました。
さて、漫画のストーリーですが、
ときは、エジプト新王国時代の第18王朝、トトメス1世の時代からはじまります。
トトメス1世は元々優秀な軍人で、第18王朝を開いたイアフメス1世の娘と結婚し、先代アメンヘテプ1世の後を継ぎ王位を継承します。
トトメス1世は、積極的な侵略戦争を行い、北はユーフラテス川西岸、南はナイル川の第4急湍へと領土を拡大していきます。
主人公のシェプスト(のちのハトシェプスト女王)はトトメス1世の娘として生まれますが、子供の時から男勝りの性格であることから「王」にも興味を持つ女性でした。異母兄のトトメス2世とは、幼少の頃からそりが合わず事あるごとに対立してきて、そのトトメス2世と結婚して夫婦となったあとも(当時のエジプトでは近親婚はあたりまえだった)、険悪な仲が続きます。
一時はトトメス2世に屈服されそうになりますが、そこから諦めずにエジプトの実質的な支配者となり、エジプトを「女性的な」目線で繁栄をもたらしていくというストーリーです。
一見、サクセスストーリーだけと思いますが、国の実権を握っていく過程での葛藤や絶望や、実権をにぎったあとの、実権を握ったゆえの孤独なども描かれ、なかなか見ごたえのある漫画だと思います。
古代エジプトの様々なことが描かれる
また、この漫画のおもしろさは、そのストーリーだけでなく、当時のエジプトの、国、風習・風俗、宗教(ミイラのことも含む)、政治、軍事、王族貴族の生活、庶民の生活、建築、他国との外交など、ありとあらゆる「古代エジプト」が漫画のストーリー、絵の中に散りばめられていることです。
ピラミッド、ミイラ、ファラオなど、名前や簡単なことは知識としてあっても、細かく古代エジプトに触れ合うことは、なかなかなかったと思います。
この漫画は、「今までちゃんと知らなかった」古代エジプトに深入することができる素敵な漫画です。
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