こんにちは。
しばらくブログ更新が滞りましたが、心を入れ替えて書いていきます。
この前、五胡十六国時代後期の流れについて書いていたときに、北涼の実質上の建国者の沮渠蒙遜が(良い意味でも悪い意味でも)魅力的な人物であることがわかり、また舞台となる河西回廊をはじめとした華北西部の興亡が、鄴や洛陽がある中原や、長安を中心とした関中の興亡に負けずおとらずおもしろそうなので書いてみたいと思いました。
いやまあ、中原エリアで戦っていた後燕の慕容垂や、北魏の拓跋珪などと較べると、地味なのは否めないのですが、華北の西の果てのエリアには、沮渠蒙遜の北涼をはじめ、後涼、南涼、西涼と「涼」を国名にした国が4つもできたり、隴西には西秦があり、関中を制した後秦もちょっかいを出してくるという、ガチな戦国乱世が繰り広げられます。
そのような、乱世の河西回廊を、その知力一本で統一まで持っていったの沮渠蒙遜の戦いを書いていきたいと思います。
沮渠蒙遜の話に入る前に、舞台となる河西回廊とはどんなエリアかをまずは書きたいと思います。
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河西回廊について
さて、沮渠蒙遜が活躍する河西回廊とはどのようなエリアだったのでしょうか?
河西回廊は長安から発し、中央アジアを通りヨーロッパまで通じる交通路、俗に言うシルクロード(その中のオアシスの道)の一部分です。
日本では「河西回廊」が一般的な呼び方ですが、「河西走廊」「甘粛走廊」とも呼ばれています。中国では「河西走廊」のほうが一般的のようです。
「河西」は文字通り「黄河の西」という意味で、黄河の西にある両サイドが狭まった細長い回廊地帯が「河西回廊」です。
前漢の武帝期には、霍去病がこのエリアで匈奴をボコボコにしたりしています。
「河西回廊」という名前自体にも何やらロマンやあこがれを感じてしまいますね。
長安から河西回廊のルート
長安を発した道は、隴山山脈を超え隴西エリア(隴右とも言います)に入り、天水を通り、金城(今の蘭州)に着きます。
この金城は道が交差している町だったようで、ここから西平(今の西寧市)がある湟河流域エリアにも行け、北に行くと河西回廊に進みます。現在だと、銀川市や四川省へも道がつながっているようですが、五胡十六国時代はどの程度道路が開かれていたか調べきれてません。
四方発達の金城を出たあとは、北へ進み烏鞘嶺の山並みを超えると河西回廊に入ります。
烏鞘嶺から姑臧、張掖、酒泉、敦煌と町を経て、西の果て玉門関までが河西回廊になります。
歴史的に見ると、この河西回廊一の中心都市は姑臧(今の武威市)であったと思います。
このエリアで覇を唱える勢力は基本姑臧を首都としていました。
河西回廊の中では一番関中エリアに近く、金城を通るルート以外にも、長安から北回りで姑臧に到達するルートもあったようです。
沮渠蒙遜の前の時代、淝水の戦い以前に河西回廊を勢力下に置いていた前涼も姑臧を首都にしていました。
回廊のエリアとそれを守る長城
回廊とはよく言ったもので、南は祁連山脈(南山)が壁となり、北は祁連山脈ほどではないですが馬鬃山、合黎山、龍首山などの山並み(北山)や砂漠があり、南北を山に挟まれた、狭く細長いエリアを形成しています。
この河西回廊のエリアには上記のような町が交通路に沿って点々と連なっているのですが、これらの町をはじめとして河西回廊のエリアに人が住めるのは、祁連山脈からの雪解け水が北の砂漠に流れていき、河川や地下水を供給していたからです。この水の流れがあるところが河西回廊の南北の幅にイコールともなっており、水が湧き出る限界地点に漢代には長城を築いてその内側の耕作可能エリアを匈奴の襲撃からまもっていたようです。
長城について言えば、祁連山脈の北のラインに沿っても長城が築かれていました。また、西の玉門関と陽関の間も長城でつなぎ、このラインで中国内地と西域を区切っていたようです。漢代は回廊の東西南北が長城で囲まれており、回廊内部を長城で防御する体制を整えていたようです。
五胡十六国時代にも漢代の長城が機能していたかは定かではありませんが、長城自体は残っていたでしょう。
さて、ここまで書いた河西回廊というエリアで沮渠蒙遜は活躍します。
河西回廊周辺の地形がわかったほうが、各国の興亡が理解できると思いますので、次回から上記「ドラ●エ風地図」を使用しながら沮渠蒙遜について書いていきたいと思います。
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