五胡十六国時代 前燕の落日㊲ 四代目慕容暐 ~前燕滅亡への道~ 前秦の前燕への侵攻:鄴城攻防戦へ苻堅様さっそうと登場

前燕

こんにちは。

前燕の并州に攻め込んだ前秦軍は、またたくまに上党軍と太原郡を制圧し、鄴から30万の兵を率いて進軍してきた慕容評率いる前燕軍と潞川で対峙します。

そして、王猛は、持久戦を指向する前燕軍総司令官・慕容評に対し、さらっと前燕軍の兵糧を焼くなどし、前燕首脳部をビビらせ、潞川での会戦に持ち込みます。

前秦軍総司令官・王猛は、破格の褒美のゲットをふっかけてくる猛将・鄧羌をうまい具合になだめ動かし、開戦した潞川の戦場にこの猛将をぶっこみます。

鄧羌の活躍などで、数万の前秦軍が30万の前燕軍を圧倒し、壊滅させます。

前燕の総司令官・慕容評は単騎で鄴の都に逃げ込みました。

快勝した前秦軍は、その勢いのまま軍を進め、太行山脈を超え華北平原に侵入、前燕の都・鄴城を包囲します。

前燕滅亡の最後のページが開かれます。

赤枠を拡大した地図が下記

王猛、鄴を囲む

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鄴の攻略戦にさっそうと参戦しようとする苻堅様だが、王猛に叱られる

さて、鄴を囲んだところで、王猛は長安で出陣したくてうずうずしている苻堅様に使者を送り、現状での戦勝報告をします。

「前燕のやつらを殲滅しました。陛下の仁愛の心で前燕の民や臣たちに危害が加わることの無いようにしてください。」

これを聞いた苻堅様は、ノリノリで返答します。

「将軍は、三ヶ月を超えずに、前燕のやつらに勝利した。これは今までにない大功である。朕は今から六軍を率いて、光の速さでそちらに向かう。将軍はしばし兵たちを休ませていよ。朕が到着してから、一緒に鄴の都を落とそうではないか。」

ここで、苻堅様の性癖「親征癖」が眩しい光を放ちながら出てきます。

もう、そのままでも王猛が万事うまくやってくれるでしょうけど、大国前燕をもう少しで滅ぼすことができるこという吉事にのぼせ上がり、みずから前線に出陣したくなるあの悪癖です。

ちなみに「親征」とは、漢語林曰く、「天子みずから軍をひきいて敵を討つこと。」です。

13年後、この悪癖で地獄を見ることなど、このときの苻堅様は知る由もありません。

ともあれ、都・長安は李威を太子の補佐にしてまかせ、洛陽を陽平公・苻融に駐屯させ、精鋭10万を自ら率いて、鄴へ向かいます。

そして、7日で鄴のすぐ南に位置する安陽まで到達します。

安陽は、「殷墟」で名高いあの安陽です。

ちなみに、鄴に向かう途中に安陽に駐屯したということは、苻堅様は、并州経由のルートではなく、黄河を超え、南から鄴の都を目指すルートを取っていたと思われます。

前燕軍30万が壊滅したこのときになると、鄴の南の黄河一帯の防衛網も機能しなくなっていたのではないかと思われます。

苻堅様、安陽に到着

王猛は密かに、鄴包囲の軍から離れ、安陽の苻堅様に会いにいきます。

機嫌がよい苻堅様は王猛に言います。

「おや、昔周亜夫(劉邦に仕えた周勃の息子)は漢の文帝が来たときも迎えに来なかったと言うぞ。将軍はなんで敵軍と対峙している中、軍を棄ててここに来たのだ?はっはっは(^o^))」

王猛は答えます。

「周亜夫は主人をしりぞけさせ、名声を得たと言います。儂はひそかにそのことを不満に思っております。儂は陛下の威霊をもって滅亡しようとしている前燕を撃とうとしており、それは例えるなら、釜の中の魚を取るようなものです。どうして、あれこれ考えるようなことがありましょうか!それよりも、監国(太子のこと)はまだ幼いというのに、なぜ陛下は長安を離れこんなに遠出をしてしまいましたか?おもいがけないことが起こって後悔しても遅いのですぞ。陛下は儂の㶚上の言葉をお忘れか?ヽ(`Д´)ノ)

王猛は、前燕攻撃に出陣するとき、長安近郊の㶚上まで見送りに来て親征の意欲を満々にアピールしてくる苻堅様へ、

風が葉っぱを掃くかのように、さっさと前燕倒してくるから、まちがっても親征なんかしてくるんじゃねーぞ(意訳)

と、釘を刺していました。

しかし来てしまったものはしょうがありません。今後は皇帝・苻堅様みずから鄴を攻撃するという形になり、鄴攻防戦は続きます。

苻堅様の気分アゲアゲのときに出てくる親征癖を、王猛は心配していましたが、この心配は王猛がこの世にいなくなったあと、淝水というところで現実のものとなります。

しかしそれはまだ先の話です。

苻堅様が直接率いる前秦軍が鄴の包囲を続け、前燕滅亡のカウントダウンが始まります。

いやマジで滅亡しちゃうんだよ。4年前までは華北東部を征服完了してノリノリだった大国が。これが五胡十六国クオリティなのです。

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【参考文献】
三崎良章『五胡十六国、中国史上の民族大移動』【新訂版】(東方書店、2012年10月)

川勝義雄『魏晋南北朝(講談社学術文庫)』(講談社、2003年5月)
『晋書』『資治通鑑』

 

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