この歴史漫画がおもしろい! 「エーゲ海を渡る花たち」 15世紀地中海世界の『旅行ガイド』として秀逸

エーゲ海を渡る花たち

こんにちは。

今日はおすすめ歴史漫画シリーズで行きます。

今日は15世紀の地中海世界を舞台とした

日之下あかめ「エーゲ海を渡る花たち」

です。


エーゲ海を渡る花たち

15世紀の地中海世界

15世紀(1400年代)の地中海世界は、中世も終焉というべき時代で、前の世紀の14世紀にはペストの大流行が起きたり、イギリスVSフランスの百年戦争が勃発したりして混沌の時代が続いている状況でありました。(ジャンヌ・ダルクのこの15世紀前半の人物です)

ただ、イタリアではルネサンスがはじまったりしており、新しい時代の動きが出てきたりしています。(レオナルド・ダ・ビンチやミケランジェロは15世紀の半ばから後半にかけての生まれです。)

そして、東地中海に目を向けると、オスマン帝国が飛ぶ鳥を落とす勢いで勢力を伸ばしてきているときです。
この漫画が描かれている時代、15世紀半ばは、メフメト2世(位1444~46、51~81)の在位中で、1453年にオスマン帝国によるビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルの陥落という地中海世界&キリスト教世界にとっての大激震が起こります。このコンスタンティノープルの陥落をもって中世が終わり近世が始まったとされています。

また、物語でも重要な存在感をもってくるヴェネチアなどのイタリア海洋都市国家などが東地中海を舞台に活躍していたりします。

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都市国家フェラーラの商家の娘リーゼ

このような時代状況の中、物語は15世紀半ばのイタリア半島北部、エステ辺境伯フェラーラ侯爵領という当時黄金期を迎えていた一都市から始まります。

主人公は、フェラーラの商家ロセッティ家の美人姉妹の妹君リーゼという16歳の少女です。

このリーゼという娘は、もっぱら男性や恋愛物語に興味がある同年代の女性たちと違い、古い異国の芸術品に興味をもち、世界を旅することを夢見る当時の「普通の娘」とはちょっと違った価値観を持っている娘でした。

そして、その行動力から地元フェラーラではちょっとした有名人で通称「跳ねる嬢(インペンナータ)」と呼ばれておりました。

クリムから来たオリハとの出会い

そのリーゼがひょんなことから、クルムから来た娘オリハと出会うことから物語は動き始めます。

クルムは現在の黒海に半島、クリミア半島のことです。クリミア半島の南の部分は、当時はイタリア海洋都市国家の一つジェノバ領でした。

クルム出身のオリハは様々な事情でイタリアに来ることになり、紆余曲折を経て今は生き別れ状態の妹を探しにヴェネチア経由でエーゲ海に浮かぶクレタ島を目指していました。

フェラーラからヴェネチア経由でクレタ島を目指す旅

オリハの話を聞いたリーゼは、このオリハの願いをかなえる&自分の旅する願望のどちらも叶えるべく動きはじめます。

ちょうど、フェラーラのリーゼの家に昔からのつきあいのあるヴェネチア商人ロレンツォが来ることになっており、ロレンツォにオリハを一緒に連れて行ってくれることをお願いするとともに自分もついていくことを了承させます。(了承を取るまでリーゼのお姉さんを説得するなどいろいろますがそれは漫画で)

さて物語は、フェラーラを出発し、ヴェネチアに着き、さらにその後の旅の延長も勝ち取り、ダルマチア地方沿いを航海してクレタ島の中心都市カンディアまで旅を続いております。(2019年9月現在コミックスにて)

15世紀東地中海世界の観光・歴史・グルメのガイドブックとしても最高!

この旅の最中いろいろな出来事がリーゼたちに起こりますが、漫画の魅力の一つとして、フェラーラ、ヴェネチア、ダルマチア地方、クレタ島にいたる間のその土地々々の観光、歴史、グルメがいろいろと描かれていることです。

ちなみにダルマチア地方は今のクロアチアの沿岸部で「101匹のわんちゃん」のダルメシアンはダルマチア地方が原産と言われています(諸説あり)。

旅はそのダルメチア地方沿いに南に進み、スパラト(現スプリト)→ラグーザ(現ドブロブニク)→カッターロ(現モンテネグロのコトル)→コルフ島(現ギリシアのケルキラ島)と進んでいきますが、物語の中に、観光の見所や、街やエリアの歴史、その土地特有の食事の情報が盛り込まれており、かなり旅行をしたくなってくる気分にさせてくれる漫画です。

実際、食事などは15世紀当時にもいろいろな土地の特徴ある食べ物があり、それが現在までつながっているようです。読んでいると腹も減るし、興味も出てくるしで当時の地中海世界に引き込まれていきます。

また、漫画内の話と話の間には、「なぜ?何?リーゼ」というページがあり、歴史や当時のことをふんわり紹介してくれるページがあります。興味がなければ読まなくてもよいと書いてありますが、おもしろいのでがっつり読んでしまいます。こういう部分も含め、15世紀や東地中海などに興味を持つきっかけになりそうな漫画であると思います。

リーゼとオリハの旅はまだまだ続きますが、この後どんなところを旅するのか早く続きが読みたい漫画です。

→全3巻で物語は完結しました


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