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「枋頭の戦い」のあと、救国の英雄・慕容垂は、前燕の実権を握る慕容評から妬まれ、さらにそこに昔から慕容垂を嫌う大后・可足渾氏が加わり、一気に誅殺されんとする立場に追い込まれてしまいます。
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五胡十六国時代を描いた小説。前燕の慕容垂、慕容徳、慕容評も出てくるぞ↓↓
悩む慕容垂
慕容評と大后・可足渾氏の悪徳ゴールデンコンビは、密謀し慕容垂を誅殺しようとします。
これを察知した太傅・慕容恪の子・慕容楷と、慕容垂の舅・蘭建は慕容垂に急いで報せます。
「先んずれば人を制すです。慕容評と慕容臧を除いてしまえば、あとは能無しばかりです。」
誅殺される前に君側の奸・慕容評を殺してしまえということです。
しかし慕容垂は答えます。
「慕容一族が骨肉の争いをしたら、国が滅亡に向かってしまう。私が死ねばよいことだ。」
さて、このあとしばらくして、また慕容楷と蘭建が訪れ伝えます。
「将軍の処断が決定したようです。もはや一刻の猶予もありません。すぐにでも動くべきです。」
しかしこれに関しても慕容垂はこう答えます。
「どうやっても、この現状を取り繕うことができないようなら、儂は外に難を避けようと思う。他に手はないであろう。」
慕容垂の味方たちは、慕容垂さえその気になれば、慕容評などは一気に打倒できると踏んでいたようですが、慕容垂は一族相争うことを望みませんでした。それをすると国が滅びに向かってしまうというわけです。
しかし先の未来を知っている私達はこう突っ込むわけです。
いや、1年のうちに前燕滅びてしまいますよー
それも、あなたの出奔は前燕の滅亡に多大な影響を与えますよー
しかも、十数年後あらたに「燕」を建国するので、今実権握っちゃったほうがよかったんじゃないですかー
いや、これは神のみぞ知ることでした。
ここで、慕容評を倒しにいかない慕容垂だからこそ、彼のために身をとして動くひとたちがいるわけです。多分
慕容垂、息子・慕容令に策を求める
さて、非常手段を取らず、外に難を避けることを決めた慕容垂ですが、悶々とした日々を過ごし、このことを息子たちにも伝えていませんでした。
ここで跡取り息子の慕容令が慕容垂の様子に気づきます。
「父上は最近悩み事が多いように見受けられます。たしかに、主上(慕容暐)がまだ幼く、太傅(慕容評)は賢才を嫌うクソ野郎である状況で、このような大きな功を立ててしまうと、いよいよ妬み嫉みを受けてしまうでしょうな。」
慕容垂は答えます。
「そのとおりじゃ。儂は力を尽くして桓温という強大な敵を破った。もとよりそれは国を守ろうと思ってのことじゃ。どうして国難を救った勝利のあとに、我が身に危機が訪れると思おうか。お前は、すでに儂の心がわかっているであろう。どのような策があるのじゃ。」
これに慕容令が答えることによって、出奔計画は進んでいきます。
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【参考文献】
三崎良章『五胡十六国、中国史上の民族大移動』【新訂版】(東方書店、2012年10月)
川勝義雄『魏晋南北朝(講談社学術文庫)』(講談社、2003年5月)
『晋書』『資治通鑑』
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